不老長寿の実が生る「ムベ」
成長するごとに葉数が増える
芽が出て初めの年は三つ葉、次は五つ葉、その次は七つ葉と、成長に合わせて葉っぱの葉数が増えていく木があります。「ムベ」です。 陰陽道(おんみょうどう)で縁起の良いとされる奇数で葉数が増えていくことから、「七五三の木」ともいわれます。
名付け親は天智天皇?
大化の改新で知られる天智天皇(中大兄皇子)が近江の国へ巡行したとき、子だくさんの老夫婦に出会いました。 「そなたたちはなぜそんなに元気がよいのか」と尋ねたところ、老夫婦が差し出したのがムベの実でした。 そのとき天皇が「むべなるかな」(なるほど、もっともなことだ)と言ったのが名前の由来とされています。(あくまで伝承です)
なぜいない?「むべ」ちゃん
漢字で書くと「郁子」です。女性の名でよく見かけますが、読みは「いくこ」「くにこ」「あやこ」などで「むべ」ちゃんというのはなさそうです。(いたらゴメンね)
ほんのり甘いムベの実
成長して葉っぱが七つ葉になると、春にクリーム色の花が咲き、秋には鶏の卵よりひと回り大きな実が獲れるようになります。 天智天皇とのご縁からか、宮中に献上されたこともあったというから、もちろん食べられます。種子をとりまく果汁も外側の果肉もほんのり甘いそうです。
「ムベ」はアケビの仲間
この地方ではあまりなじみのない木ですが、里山や雑木林でよく見かけるアケビの仲間です。アケビと同様、つるを伸ばしながらほかの木にからまって成長します。 アケビは落葉樹ですがムベは常緑樹で冬でも落葉しないところが大きな違いです。
アケビの実は熟すと裂けて割れ目ができますが、ムベは完熟しても裂けないのが特徴です。落葉しないことも併せて、別名「トキワアケビ」ともいわれています。
垣根や棚仕立てで育てよう
つる性の植物なので、ほかにつかまるものがないとうまく成長できません。フェンスや竹垣に這わせて生垣にしたり、支柱に誘引して棚仕立てにするのが一般的な栽培方法です。 アケビと違って冬でも落葉しないし、実が裂けてはじけることもないから、虫の心配は少ないみたいです。【写真はグリーンピア春日井】
ムベは一株でも実が生る木
アケビは自家受粉しないので、種類の異なる2本以上の株を混植しないと実が生らないと言われています。アケビの場合は「三つ葉」と「五葉(ごよう)」の組合せが一般的です。 ムベは1本の木で三つ葉・五つ葉・七つ葉を兼ねているせいか、一株だけでも自家受粉して実をつけます。
雌花と雄花が同じ木に混在して咲きます。人工授粉するときは、雄花の花粉を雌花に授粉します。
子供の記念樹にオススメ
不老長寿の実が生るといわれる縁起のよい木です。子供の成長に合わせて葉数が3・5・7と増えていき、七つ葉になると実が収穫できるのも楽しみです。 子供が生まれたら記念樹として植えてみてはいかがでしょうか?